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「く……クミ!!」
何も出来ない自分への苛立ちと悔しさが。美久を駆り立てた。
ソファーから一気に立ち上がりそのまま出刃包丁を振り回しているバーバラに突進。
「来ちゃ駄目!!」
危険を感じたクミが美久に飛び掛かった。
「バタン」
美久とクミはその場に倒れる。
倒れた裸のクミを覆うように美久が上から被さった。
バーバラの巨大な影と、文也が起き上がり向ってくる足音。
絶体絶命。
なぜこんな状況が起きているのかなど考えている暇はなかった。
美久は非力な自分を呪った。
目の前には髪が乱れ倒れているクミの横顔。
クミは優しい声で。
「ありがとう、美久」
と、一言つぶやいた。
クミの横顔は微笑んでいた。
自分が何も考えずに行動したせいで、こんな状況になってしまったのに、と美久は自分を責め続けた。
悔し涙が床に落ちる。
バーバラと文也の影は真後ろ。
この状況からの逆転など有り得なかった。
「ごめんなさい……」
美久が顔をくしゃくしゃにして謝ると、二人は死を覚悟した。
「バリン!!」
時がスローで流れ始める。
ガラスが激しく割れる甲高い音がロビー全体に広がった。
美久とクミは何が起こっているのか全く解らない。
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