2人が本棚に入れています
本棚に追加
「立てーーーーーーー!」
男の叫び声と共に、二人は手で床を叩き立ち上がると、玄関の方まで全力で走った。
「パリン、カチカチ――パリン」
ベランダから男が入ってくる音が聞こえる。
「なにこれ、乱交タイムですか?」
両手に野球ボールを持ち、黒髪のパーマにサングラス、少し大きめのベースボールシャツを羽織った半ズボン姿の男が立っていた。
バーバラは出刃包丁を左手に持ち変えると、巨大な体で男に突撃。
割れた破片を右手で拾った文也も後につづく。
男はそのまま引き付けるように外に飛び出た。
「ちょ!怖!!」
バーバラが男の背後に接近。
その男は思い切り体をひねると至近距離でバーバラの顔面に公式野球ボールを叩き付けた。
「ゴン」
さらに左手のボールを右手に持ち変え、文也に投げると見せかけ左足で顔面を蹴り上げる。
左足が見事に直撃。文也はオモチャの様に地面に倒れた。
「あら――勝っちゃった」
外で大の字に伸びるバーバラと文也。
美久とクミはなにも声が出ない。
「……」
「……ぁ」
美久は真綾の友人が戻ってきたんだと確信した。
その男は再びベランダから土足で家の中に入ると、クミと美久に近づいて来た。
二人は棒立ち。
美久はクミを見ると、急いでクミの体を隠した。
「……あ、あの」
「はい、こんにちは。タイムリミットまであと何時間だい?さあ君達はどうする?」
時計を見る美久、11時05分。
残り2時間55分。
二人はこの声に聞き覚えがあった。そしてその男はサングラスを外した。
「おばあちゃんはどうした」
あの男だった。
そう、クミを創った男。
全て見透かしているようなそんな目をしていた、美久は直ぐに気づいた、クミのGPSを追ってきたのだと。
「な、なにしにきたの……」
美久はやっとショルダーバックから真綾から預かった銃を取り出し震えた手で構えた。
最初のコメントを投稿しよう!