第19話

2/4
前へ
/25ページ
次へ
「立てーーーーーーー!」 男の叫び声と共に、二人は手で床を叩き立ち上がると、玄関の方まで全力で走った。 「パリン、カチカチ――パリン」 ベランダから男が入ってくる音が聞こえる。 「なにこれ、乱交タイムですか?」 両手に野球ボールを持ち、黒髪のパーマにサングラス、少し大きめのベースボールシャツを羽織った半ズボン姿の男が立っていた。 バーバラは出刃包丁を左手に持ち変えると、巨大な体で男に突撃。 割れた破片を右手で拾った文也も後につづく。 男はそのまま引き付けるように外に飛び出た。 「ちょ!怖!!」 バーバラが男の背後に接近。 その男は思い切り体をひねると至近距離でバーバラの顔面に公式野球ボールを叩き付けた。 「ゴン」 さらに左手のボールを右手に持ち変え、文也に投げると見せかけ左足で顔面を蹴り上げる。 左足が見事に直撃。文也はオモチャの様に地面に倒れた。 「あら――勝っちゃった」 外で大の字に伸びるバーバラと文也。 美久とクミはなにも声が出ない。 「……」 「……ぁ」 美久は真綾の友人が戻ってきたんだと確信した。 その男は再びベランダから土足で家の中に入ると、クミと美久に近づいて来た。 二人は棒立ち。 美久はクミを見ると、急いでクミの体を隠した。 「……あ、あの」 「はい、こんにちは。タイムリミットまであと何時間だい?さあ君達はどうする?」 時計を見る美久、11時05分。 残り2時間55分。 二人はこの声に聞き覚えがあった。そしてその男はサングラスを外した。 「おばあちゃんはどうした」 あの男だった。 そう、クミを創った男。 全て見透かしているようなそんな目をしていた、美久は直ぐに気づいた、クミのGPSを追ってきたのだと。 「な、なにしにきたの……」 美久はやっとショルダーバックから真綾から預かった銃を取り出し震えた手で構えた。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加