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そう言いながら彼は自分のTシャツの胸の辺りを指で軽く掴み、パタパタと空気を入れた。
油っぽい汗の匂いが漂ってくる。
無神経だなと思い、辺りを見回す振りをして、そっと顔を背けた。
「そういえば部屋、一人部屋なんですね」
浅黒い肌によく似合ったアーモンドみたいな目で、彼は涼の顔を覗き込みながら言った。
至近距離で二人の視線がぶつかり合う。
涼は咄嗟に視線をそらす。
心臓がバクバクいっている。
変な奴だと思われなかっただろうか。
「あっ、いきなりこんなこと言ったからビックリしちゃいましたよね、すみません、さっき一人部屋から出てくるところを偶然見たんですよ、だから知ってたんです」
彼は涼の異変には気付いていないようで、白い歯をのぞかせて無邪気に笑った。
涼はホッと胸を撫で下ろす。
それが彼、牧瀬と仲良くなったきっかけだった。
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