第1話

9/10

34人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
「その主婦が深夜帯に入るって聞いた時に、もしやと思ったんだよね、そしたらやっぱり物欲しそうな顔してるからさー」 牧瀬は鼻の穴を膨らませて自慢気に語る。 「主婦って言ってもまだ二十代後半だから全然行けんのよ、全然綺麗だし」 年上の女性を相手にしたという優越感からか、牧瀬の顔はいやに輝いている。 「何しにバイト行ってるんだよ」 涼は苦笑しながら、自分の居場所のなさを感じていた。 こんな話を聞いてもちっとも羨ましいと思えない。 女を抱きたいと思わないのだ。 自分はおかしい。 いつか普通になるんだろうか。 「涼もさ、うちのバイト先で働かねぇ?俺から店長に話つけるからさ、結構店長に気に入られてるから俺の紹介なら…ってことで入れてくれると思うんだよな」 こいつの自信は一体どこから来ているんだ?もはや過信だな、と若干呆れつつも牧瀬のそんな部分が、自信のない涼は羨ましくもあった。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

34人が本棚に入れています
本棚に追加