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「たかみん聞いてよぉ!アイツったらひどいんだよ。付き合ってるあたしの誕生日なのに『用事』とか言って先に教室出ちゃってさぁ、追っかけたら一年の女子がべったりくっついてるわけよ!ひどいと思わない?」
パタパタと校内履を鳴らして教室に戻ってきた晴菜は、帰りかけた同級生の一人を捕まえると早口でまくし立てる。たかみんと呼ばれたその生徒、貴美は、また始まったかと言いたい気持ちを呑み込んで、苦笑いで晴菜の頭を撫でた。
「うんうん、大変だねぇ。モテるカレ氏を持つと」
「もう断然頭にきたっ!卒業式の時に先輩方が言い寄ってきたのは許せたけど、今度ばかりはだめっ!あんないたいけな新入生にベタベタされて両手で掴まれちゃってさ!後姿でもにやけてるの丸わかりなんだからっ!
あの新入生も訳わかんない。いったいアイツのどこがいいって言うのよ、ねぇ?」
……いや、それを晴菜が言うのはどうかと思う、等と言い返さないところが貴美の美点であろう。いわゆる聞き上手の世渡り達人。
「まぁ、三月の時の、あの卒業生とは何事もなかったわけだし、彼の浮気って長続きしないみたいじゃん」
「浮気自体に問題が大有りよっ!」
「うんうん、せっかくおニューのブラしてきたのにね、晴菜?」
「げげ、恐るべし女子チェック。
へへっ、だってだって、誕生日くらい、ねぇ?結構小遣い跳んだんだよぉ、コレ。
……閑話休題。
そういうたかみんだって最近サイズアップしてるしぃ?ん?」
「核弾頭バストの持主に言われても複雑だよ……
あ、袴田君だ?」
梅雨も半ばの、もわりとした夕方の教室。
制服のベストの膨らみを眺めっこしている女子高生二人を前にして、おそらくは二人より低身長の同級生が困惑顔で立っている。
「袴田君?」
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