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――その後ろに、坊主頭の葉山も立っている。
あんなに伸びた髪を、丸坊主にするなんて。
まるで、噂を認めたかの意思表示に、俺の胸は騒いだ。
「謝罪がしたいんだとよ」
学年主任を間に挟み、廊下で俺を見つめる葉山。
隣のクラスからも野次馬が現れていた。
「此処じゃ目立ちますから―……」
「ごめん。滝谷」
俺の言葉を遮るように、葉山は頭を下げた。
二つに折れるように深々と。
回りの野次馬に見せつけるように。
葉山の後頭部には、ガーゼが貼られていて、本当に怪我は少しだけだったようだ。
「あ……」
何か言わなければいけないのに、言葉が出てこない。
「『ソレ』は何に対しての謝罪ですか?」
淡々と言えた言葉はそれだけだった。
俺を乱暴にしたと認めた謝罪か、
パフォーマンスからの謝罪か、
何の意図がある謝罪なのか俺には分からない。
「お前を傷つけた謝罪だ」
「…………」
回りの注目に居心地の悪さを感じながらも。
葉山の推薦が取り消された事に不安を感じながらも。
やっとあんな酷い事から解放されるのに。
なのに俺の心は、まだ不安定だった。
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