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こんな……!
「こんな場所で目立つように謝られても、信用できません。本当に、――本当に悪いと思っているならば、俺とすみれにはもう近づかないで下さい」
そう言うと、葉山の体が揺れたような気がした。
だが、顔はあげなかった。
「分かった。――本当にすまなかった」
教室から見ていた野次馬も、驚愕していた。
素行が悪い葉山が、こんなに真摯に謝っているのが信じられないんだろう。
「坊主までして反省の姿勢を示したのだけは上にも伝えてやるが、推薦は……」
学年主任も、一向に頭を上げない葉山に、同情したのか言葉を探していた。
「推薦なんてどうでもいい。もう、いいんだ」
その言葉に胸が痛んだ。
キリキリと締め付けられる。
「では、先生……。失礼します」
俺はそう言って振り替えると、心配そうなすみれが立っていた。
回りの注目を気にもせず、すみれは俺の所まで歩いてきた。
「ありがとう。絢ちゃん……。大好きよ」
そう言って、ツーッと涙を溢した。
回りから見たら、最後まで俺は、恋人のすみれを守ったように見えるだろう。
――俺にはすみれの演技はお見通しなのだが。
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