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俺は、葉山が怖かった。
全く俺の意思や言葉は無視されて、強引で乱暴で。
あの射抜くような目も金縛りになる。
でも、いつからだっただろう。
俺は、葉山に意見はしなくなった。
諦めて、早く時間が過ぎる事を願っていた。
葉山は、確かに最低な行為をしたが、単純で無鉄砲で、必死で俺に叫んでいた。
怖いからと拒否して逃げたのは、俺。
でも知ってる。
部活だけは毎日頑張って出ていたのは。
進学校の弱小チームを、ぐいぐい引っ張ってくれていた事も。
だ、から胸が痛い。
だから、俺は、迷うんだ。
「あ、起きるかも」
そう言って携帯の電話を切る音がした。
「……これ以上は近づかないから逃げないでくれ」
意識をはっきり取り戻し辺りを見回すと、学食のテーブルの前。
携帯片手に、食堂の入り口に立っているのは葉山だ。
「もう解決したから、夢遊病なんて起きないと思ってた」
そう言って、坊主頭をぽりぽりと掻いた。
無造作に伸ばしていた髪が無くなった分、整った顔立ちがはっきり分かった。
俺を睨み付けるその瞳も。
「でも何となく耳を澄ましてたら、階段から足音がしてさ。部屋から出たら、やっぱ絢斗だった」
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