122人が本棚に入れています
本棚に追加
それからの日々は、穏やかだった。
俺は退寮し実家に戻ったが、葉山も部活に顔を出すのは止めて、大学受験の為に実家に戻ったようだ。
俺は朝から放課後までずっと学祭や体育祭の準備で慌ただしかったし、葉山は塾の掛け持ちで放課後はすぐに帰っていた。
教室の移動に見る葉山は、寝ずに授業を受ける姿だけ。
――ただ、それだけだ。
俺から葉山に話しかける必要は無かったし。
葉山が俺に執着しない限り。
だけど、俺の胸に残る不安はー……。
「先生!」
「お、滝谷。学祭頑張ってるな。だが学祭終わったらすぐ指定校がー……」
煙草臭い学年主任が、椅子を回転しながらにこやかに言う。
だが、俺は。
「あの、お願いがありまして」
馬鹿だと言われても、良心が痛むんだよ。
◆side 葉山◆
「もー、葉山くん、少しは学祭準備手伝いなさいよ」
昼休み、勉強疲れの俺を揺さぶり起こした女。
……名前なんだっけ?
「3年は何もねーじゃん」
「モザイク画のノルマはあるわよ。葉山くんは二日目の体育祭でリレーのアンカーでしょ?」
「んなの適当で良いだろ」
欠伸をしてまた机に突っ伏したら、腕を引っ張られた。
「生徒会が有志を募集してたの!」
――嗚呼、この馬鹿女。
最初のコメントを投稿しよう!