122人が本棚に入れています
本棚に追加
「単刀直入に言うと、スポーツ推薦の話なんだが」
「あ?」
絢斗は此方を見ずに、窓の外から視線を動かさない。
だから表情からは分からない。
「学年主任じゃ迷惑かけそうだから、理事長に直接頼んでみました。次のテストで結果を出したら、もう一度チャンスをあげて欲しいと」
「なんで?」
「ちょうど調べたらスポーツ推薦がまだ受けられる大学がまだありまして」
「こっちを向けよ! 絢斗!!!」
つい大声を出してしまったが、絢斗は怯えなかった。
風に舞うカーテンを捕まえて、瞳を伏せる。
「君が俺にした事は、赦される事ではないかもしれません。でも」
キュッとカーテンを握り、悲しそうに瞳を揺らした。
「『ソレ』は俺と君の問題です。君の人生の大事な選択肢が、俺の事で減るのは嫌で。
君の可能性を奪うのが、怖くて不安で」
そう言うと、絢斗は振るえた。
繊細で美しいラインの腰が、儚くて。
今すぐ抱き締めたくなる気持ちを必死で抑えた。
あんな脅して、無理矢理組み敷いて、滅茶苦茶に奪った俺なんかの未来に、絢斗は胸を痛めてくれていた。
俺は、俺はこんなに心まで綺麗な絢斗を汚したんだ。
壊そうと、していたんだ。
最初のコメントを投稿しよう!