第2話

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一人だけ、目立っていた。 すり抜けて駆け出し、すばやくゴールを決めている。 此方からは背を向けていて見えないが、背中を見ただけで、足が震えてしまった。 「絢ちゃん」 チャラチャラと鍵を鳴らしながら、すみれも現れた。 「? お前起きるの早いな」 「違うわよ。絢ちゃんが携帯にメールしても電話しても繋がらないから待ってたの。はい、鍵」 「あ……」 すみれが俺の手に鍵を握らせた。 「葉山くんから私が受け取っておいたの。 なんなら鍵、交換しても良いけど?」 後輩二人はお土産のお菓子に夢中で、俺とすみれの話はあまり興味がなさそうだ。 「ありがとう。携帯、充電器を寮に忘れててさ」 「絢ちゃんらしいね」 3年はとっくに部活は引退しているはずなのに。 夏休み中、ずっと部活していたのは何故だろう。 ――スポーツ試験でもあるのか? 「葉山が気になる?」 すみれにそう言われ、俺はあいつの背中を睨み付けていた事に気づいた。 「いや。やっと関わらずに済むからさ……」 そう言いながらも、不安はぬぐいされなかった。 携帯を、 ――携帯を開かなければいけないのだから。
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