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「お前、馬鹿だろ。お前に酷い事したんだ! 受けて当然の報いだ! お前がそんなに、そんなに優しいから!!!」
――俺はいつまでも、お前を忘れられねーんだ。
お前が堪らなく、欲しいんだ。
その優しさに、すがり付いてしまうんだ。
「――やっとだね、葉山」
『葉山』
そう呼ばれ、目を見開いた。
「やっと、俺の言葉は、君に届いたんだね」
そう言うと、泣き出しそうな顔で笑った。
「俺は、怖くて言葉が君を否定することばかりだったけど。でも俺は、君に自分の気持ちを聞いて欲しかった。ずっと心に訴えていたんだ」
「絢斗……」
「君がバスケ部で頑張っていた事だけは、知ってるから。だから次のテスト、結果を出して。
俺に恥、かかすなよ。
俺に赦されたいなら、尚更」
そう言われ、俺は頷いた。
絢斗の言葉を無視して、自分の気持ちだけ叫んでいた俺は恥ずかしくて情けなくて。
「じゃ、もう良いよ。早く出ていかなきゃすみれ達が戻ってくる」
絢斗は一度も窓辺から離れず、俺もドアから動かない。
それが俺たちの距離。
それが今からずっと、俺たちの距離なんだ。
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