第2話

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そう言うと、下を向いた。 俺も下を向いてしまう。 友達としてならば、君を好きになれたのにな。 そう思うと、この出会い方が残念で虚しくて滑稽だった。 「あ、青です」 渡ろうとした俺の腕を、 葉山は捉えた。 「悪いけど、友達になりたい訳じゃねーんだよ」 「はや……!」 言い終わらない内に、キス、された。 油断、していたから反応が遅れる。 カシャン 眼鏡がぶつがって落ちるぐらい、荒々しく。 息ができないぐらい、深く。 何も考えられないぐらい、熱く。 飲み込む、飲み込まれる、苦い、キス。 抵抗は、できたと思う。 抵抗したら止めてくれたと思う。 けれど、俺は、瞳を閉じた。 諦めたわけじゃない。これが最後ならば。 気が済むならば、受け入れようと。 離された唇同士が糸を引く。 だがその糸は簡単に、すぐに、切れてしまった。 元から俺と君には繋がるはずがない、運命の糸なのかもしれない。 離された腕が痛み、ゆっくりと擦った。 「やっぱり根本的には君は変わらないのですね」 そう言って笑うと、俺は、唇を拭いた。 「さようなら」 佇む葉山を置き去りに信号を渡った。 信号はすぐに点滅し葉山を置き去りにしてまた赤になる。
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