122人が本棚に入れています
本棚に追加
しばらく歩いた後、俺の瞳から涙が溢れてきた。
最後まで分かり合うことが出来なくて、混沌とした苦い胸の痛みが込み上げてくる。
切なくて、苦しくて、哀しくて、虚しくて。
――俺は、君を嫌いたくなかった。
振り返ろうと後ろを向こうとしたが、視界に入ったバス停に目を奪われる。
すみれがバス停に座ってまっていた。
「止めた方がいいよ。絢ちゃん」
「すみれ……」
「絢ちゃんが罪悪感を感じる必要はないよ?」
そう言うと、俺を抱き締めた。深く深く抱き締めた。
罪悪、感……。
俺にもこの気持ちの名前は分からなかった。
だけど、すみれの温もりは温かくて安心できた。
だから、もう振り向く事は無かった。ゆっくりとすみれの頬に手を伸ばす。
「なんで此処にいるの?」
「弟くんに渡す参考書を頼みたくて、ね」
そう言いつつも、手ぶらのすみれを見て笑ってしまった。すみれを家に送り届け、また一人で歩き始める。
最初のコメントを投稿しよう!