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気が付けば、彼女の瞳から星が一つ頬を伝って零れ落ちていた
「セイラ、ちゃん…?」
薄暗い中でも、互いの顔が見えるまでに接近はしていた
それはつまり、彼からも彼女が涙を零している事に気が付くという事
「……何でも、ないんです…何でも…」
初対面の人の前で涙を流してしまった恥ずかしさを誤魔化すかのように、手袋に包まれた手で顔を覆い隠す
今更、隠し通せるわけでもないが、それでも泣き顔は見られたくなかった
「あ、あぁ……えっと、ごめん…」
どうして彼が謝るのか
何も悪い事はしていないと言うのに…
しかし、嗚咽を抑える為に噛み締めた口からでは言葉を紡ぐ事は出来ない
この衝動が収まるのを、少女はじっと待つ
「僕が、何か悪い事を言っちゃったんだよね…思った事が、よく口に出るって言われるから…きっと、その…」
そこで口篭る
それは先の彼の言葉が本しんだと言う裏付け
少女は分からぬままに、一層涙を流し続けた
その間も彼は、少女の様子を見続け、その場から離れる事はなかった
それからどれだけの時間が経ったのか
体感ではとても永く感じていたが、実際にはそうでもなかったのかもしれない
漸く泣き止んだ少女は、ポツリと最後の涙と共に言葉を零した
「空、を…見上げて…」
「空…?」
少年は言われるままに空を見上げる
そして、目を奪われた
普段の街の喧騒の中では見る事の出来ない、とても煌びやかで美しい星空
今は邪魔をする光も、雲も無い
ただ、星が瞬き月が唄う
そんな星空だった
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