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「なるほどな。溶岩の支流ってことか」
火山噴火の圧力に耐えかねて出来た亀裂か何かに、高圧ガスや溶岩が流れ込んだのがこの洞穴の成り立ちなのだろう。
その際通り抜けていったマグマが洞穴内部をコーティングしたため、幾千年たった今も現存してるってところだろうか。
いずれにしてもこの洞穴が通じているのは、地獄の釜のごとくぐらぐらと沸き立つ、火口の底ってことだな。
「で?どっちなんだ?」
「あい、あっちでしゅ!」
俺の質問に何故か嬉々とした様子で、バティのヤツは洞穴の奥を指し示す。
見はるかす先はおそらくだが、火口へと通じる切り立った横穴。
要するに、行き止まりってことだ。
「ったく、とんだ無駄足だったぜ」
「まあまあ、ダスティン殿。せっかくここまで来ましたゆえ、奥まで行ってみませぬか?」
結局、山頂付近にあると思われる『マナ溜まり』から火口を通じてこの洞穴に流れ込んだものを、バティのヤツが検知したってことだろうが、空を飛べない人の身としては、そんなショートカットを望めはしない。
出来ることと言えば、せいぜい話の種に火口を覗き込んで、がっかりして帰るぐらいだろう。
そんな期待感ゼロの有り様で、俺たちは大通りと化した洞穴を漫然と進んで行く。
やはりと言うべきか、奥へ進むほどに辺りは明るさを増し始めた。
「ん?ありゃ何だ?」
そんな、だらだらとした雰囲気の中だ。
いや、だらだらしてたのは俺だけなのだが、それはいい。
とにかく、近づいてみて気づいたのだが、実はこの大通りには小さな横穴がたくさん空いていたのだ。
左右の壁のスネほどの高さに、ダクトのような横穴が合わせて二十数個。
そしてその横穴の入り口辺りに、何かが蠢いているような気配がしたのだ。
「ダスティン殿、魔物の群れのようです。ご用心を」
「よし。だったら、とっとと引き返そう」
と、思ったのだが時すでに遅し。
こちらに気づいた魔物たちは、その尖ったアゴを上げて、わらわらと襲いかかってきた。
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