黄昏を遊ぶ猫

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翌朝、優大は子ども達の声で目を覚ました。 「お父さん、良いって言ったの??」 寛の声が弾んでいる。 「もう1回、ちゃんとお願いしたほうがいいわよ」 「うん!」 足音が近づき、部屋のドアが開いた。 寛に続いて、理恵も父の枕元に座る。 「お父さん!お願い!猫飼っていいでしょ??」 「パパ!お願い!飼っていいでしょ??」 まるで輪唱のように2人の声が重なる。 「飼ってもいいが、ママには迷惑かけちゃダメだ。出来るだけ自分たちでやること!」 「うん。わかってる」 「ほらパパ!可愛いでしょ?」 優大はベッドの上で身体を起こし、理恵が抱きかかえる猫を見た。 ──まさか……── 日本ではあまり見ないシャム猫の一種。 尻尾の先と前後の足以外は真っ黒で、尻尾の先っぽと、前後の足は靴下を履いているように毛の色が真っ白い。 ほとんどススのミニチュアと言っていい。 そっくりそのままだ。 ススの子ではあるまいか。 「玄関の前に捨ててあったのか?」 「そうだよ」 「迷い猫なんじゃないのか?」 「でも、玄関の前に座って、ず~っとうちの方見てたんだよ」 ──いくらなんでもマレーシアから……── 仔猫はじっと、優大を見つめている。
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