黄昏を遊ぶ猫

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最初のうちは、優大の滞在先になっていたコンドミニアムで会っていたが、そのうちに美紀のマンションへ行くようになった。 決して新しいマンションではないが、クアラルンプールの中心地から少し離れた、静かな所にある綺麗なマンション。 夜にはペトロナスツインタワーのライトアップを観ることができた。 すぐ下には大きな公園があり、公園の中心にはモスク(イスラム教の礼拝堂)が建っていた。 美紀は猫を飼っていた。 体は尻尾の先と前後の足以外は真っ黒で、尻尾の先っぽと、前後の足は靴下を履いているように毛の色が真っ白い。 マレーシアの隣国、タイが原産のシャム猫の一種だと聞いたが、日本では1度も見たことの無い種類だった。 名前はスス(Susu)。 マレーシアの言葉で“おっぱい”の意味らしいが、響きが気に入ったのだという。 「雄?」 「ううん、雌」 「普段は独りでお留守番をしてるわけか」 「そう。でも近所の雄猫にモテちゃって困るのよ‥‥上手く屋根をつたって、うちのベランダまで昇ってくるのよ。まったく…深窓のご令嬢なのに」 一度、猫の盛りの時期に美紀の部屋に泊まった。 夜通し雄猫の鳴き声を聞かされ、一睡も出来なかった。 「へんな奴に赤ちゃんなんか生ませられたら困るでしょ」 「じゃぁ戸締まりはしっかりしないと」 ベッドの中で2人で声をあげて笑った。 美紀の体も‥‥猫のようにしなやかだ。美しい。そしてしっかりと絡み付く。
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