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夜の0時をまわっている。
優大(まさひろ)はポケットの鍵を探り出すと、玄関のドアをそっと開けた。
「…‥ただいま」
誰かが起きていれば、やっと聞こえるほどの声で告げ、ドアのチェーンを引っ掻けた。
玄関を開けてすぐは階段。
上はひっそりとしている。
子ども達はとうに眠っているだろう。
理恵(りえ)と寛(ひろし)。
小学校5年生と3年生だ。
活発な年頃なだけに、昼間は遊びや習い事と忙しく、夜はすぐに寝てしまう。
寝室のドアの隙間から、暗い光が縦線を作って漏れている。
この光が明るく輝いていれば、妻の有弓(ゆみ)が起きている証拠である。
今日のような薄暗い光の場合は、どちらとも言えない。
音がしないよう、静かにドアを細く開けて中へ入った。
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