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「君は、人間じゃない」
「…え?…」
少年は、一瞬、意味を理解できず、戸惑った。
そして、もう一度、質問を繰り返した。
「じゃあ…人間じゃないなら…僕は…何者なんですか?」
「それは説明しがたい、君自身より君のことを知ってる僕たちですらよくわかってないから、完ぺきな解は出せない。しかし、生物学的に、君の体を解体しても、多分、人間のそれが現れると思う、それは、君は、完ぺきに人間じゃなくても、体のつくりは、人間のそれだからだ。だが、君の、いや、人間の根源をなす、精神というもののシステムの在り方が、若干違うんだよ」
「どういうことですか?」
「それに関してはかなり詳しい説明が必要だなぁ」
大辻が割って入る。
「この世界では、科学という考え方が、根強く浸透している。そして、霊的なものは、常識としては、否定されている。そんなもの、あるわけないと。だがな、その霊的なものを深く理解し、その霊的な力を使って、まあ、戦争なり闘争なりするのが、この組織のすることなんだよ」
「は?」
「まあ最後まで聞けよ、えっと、お前は、その闘争の過程で生み出された、言ってみれば、霊的な力を実態にして作り出された人間なんだ」
「…つまり?」
「察しがわりいな。いいか、詳しく説明するとだな…」
「もう!私が説明します!」
さすがに我慢ならない佐藤が話を中断させ強引に説明の主導権を握る。
「あなたの体の仕組みは、人間とはかなり異なります。我々人間の場合、体というものがあって、その中に精神が収まっている形です。体と精神は別のものとして存在し、二つを連結させて、生命活動を行っています。しかしあなたの場合、精神を核にして、その周りに精神エネルギーを質量にして、その質量で作られた体が生成されている形です」
「じゃあ、僕は、幽霊ってことですか?」
「意味合いは近いかもしれないわね」
「死んだ人間の魂が具現化されたものが幽霊とするなら、遠くはないかな、今のところはその認識でさしつかえないよ」
「なんつうか、霊的なものっていうか、そっくりそのまま霊になってんな」
「不謹慎ですよ!相手は一応生きてます」
「はいはい、自分も一応とか言ってんじゃねえか」
「うっ…」
「よし、論破」
「そんなことはどうでもいいから、話進めるよ、二人とも」
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