オープニング

5/7
前へ
/9ページ
次へ
「まじめにやってくださいってば!」  男は無理やり話を終わらせて、男の職場であると思われる本部という場所に向かった。  日本国、東京の都心、東京駅から北に歩いて1時間半ほどのところに、その本部ビルは建っていた。 「どうも、ここの空気は好きになれねんだよな」 「さっきまで「あ~人探しめんど~い…さっさと帰りた~い…」って言ってたのは誰ですか?」 「あ~も~わかりましたよはいはい」  めんどくさそうに答え、男はドアをノックした。 「妖術指導課3部係長、大辻釜太(おおつじかまた)です、ただいま帰りました」 「…入れ」 「はい」  男、大辻釜太はドアを開けた。  中には、一人の初老の男性と、少年がいた。  男性は、奥のほうの、お偉いさんが座っているイメージの椅子にどっかり腰かけ、威厳を漂わせている。その隣で、少年は戸惑うような表情をしながら、ただ突っ立ていた。  13から15ぐらいのちょうど中学校に通ってそうな年に見える少年は、どこか幼い、今まさに生まれたばかりのような雰囲気を醸し出していた。  男が口を開いた。 「そういえば、大辻君の隣にいる君は、誰だったかな?」 「あ、わたしは、妖術指導課3部の、佐藤(さとう)美智子(みちこ)です」 「そうか」 「あの…」  佐藤美智子はなにやら言いにくそうに、質問をした。 「この子は、どちら様でしょうか…?」 「ああ…この子か…ん?そういえば君たちは発生の瞬間には立ち会ってなかったのかい?」 「え?…あ、いや、その時はちゃんといましたけど…っ!」 「?」  美智子は息をのんだ。  大辻も、その状況を理解し、少し戸惑ったような顔をしている。  ようやく、大辻が口を開いた。 「あの…まさか…この少年が…」 「まさかって、まさにそうだよ、この子だ」 「いや、でも…この子…男の子じゃないですか!」 「性別まで指定できないからからね、僕もてっきり女の子だって思ってたよ」  そういって、初老の男はちょっと残念そうに少年を見た。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加