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「まじめにやってくださいってば!」
男は無理やり話を終わらせて、男の職場であると思われる本部という場所に向かった。
日本国、東京の都心、東京駅から北に歩いて1時間半ほどのところに、その本部ビルは建っていた。
「どうも、ここの空気は好きになれねんだよな」
「さっきまで「あ~人探しめんど~い…さっさと帰りた~い…」って言ってたのは誰ですか?」
「あ~も~わかりましたよはいはい」
めんどくさそうに答え、男はドアをノックした。
「妖術指導課3部係長、大辻釜太(おおつじかまた)です、ただいま帰りました」
「…入れ」
「はい」
男、大辻釜太はドアを開けた。
中には、一人の初老の男性と、少年がいた。
男性は、奥のほうの、お偉いさんが座っているイメージの椅子にどっかり腰かけ、威厳を漂わせている。その隣で、少年は戸惑うような表情をしながら、ただ突っ立ていた。
13から15ぐらいのちょうど中学校に通ってそうな年に見える少年は、どこか幼い、今まさに生まれたばかりのような雰囲気を醸し出していた。
男が口を開いた。
「そういえば、大辻君の隣にいる君は、誰だったかな?」
「あ、わたしは、妖術指導課3部の、佐藤(さとう)美智子(みちこ)です」
「そうか」
「あの…」
佐藤美智子はなにやら言いにくそうに、質問をした。
「この子は、どちら様でしょうか…?」
「ああ…この子か…ん?そういえば君たちは発生の瞬間には立ち会ってなかったのかい?」
「え?…あ、いや、その時はちゃんといましたけど…っ!」
「?」
美智子は息をのんだ。
大辻も、その状況を理解し、少し戸惑ったような顔をしている。
ようやく、大辻が口を開いた。
「あの…まさか…この少年が…」
「まさかって、まさにそうだよ、この子だ」
「いや、でも…この子…男の子じゃないですか!」
「性別まで指定できないからからね、僕もてっきり女の子だって思ってたよ」
そういって、初老の男はちょっと残念そうに少年を見た。
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