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少年は、しばらく二人を交互に見てから、口を開いた。
「あなたたちは、誰ですか?僕が何者なのか、知っているのですか?」
大辻は答える。
「俺は大辻釜太、お前は俺たちの組織のキーパーソンにな…」
「あまりしゃべりすぎないようにしてもらいたいな」
「はい」
「大辻さん、そもそもこんな生まれたての子にそんな難しい話しても…」
「わーかったわかった、今度から気を付けっから、説教はかんべんな!」
3人のやり取りにしびれを切らし、少年は少し大きめの声で尋ねた。
「いったい、何の話をしてるのですか?ここはどこですか?僕は誰ですか?あなたたちは何なんですか?」
その問いを合図に、部屋にはしばらく沈黙が訪れた。
初老の男が、口を開く。
「私は、概壇(がいだん)糸(いと)瀬(せ)、この組織の幹部をしている。そしてこの場所は、この日本という国の「縁の下の力持ち」的な働きをしている組織、「守護の術義」、その本部だ。そして、今教えられるのは、それだけだ」
「ちょ…そこまで教えちゃっていいんですか?」
「どうせいつかは知ることになるんだ、やっぱり今のうちに教えておくよ」
概壇は少年の目を、しっかりと見据える。
「お前がどういう存在なのか、お前自身もわからないだろう。むしろ、それに関しては、私たちのほうが知っている。そして、君には、記憶はなくても、最低限の常識は体にしみこんでいるらしい。君が記憶もないのに不自由なく言葉を発してるのが、いい証拠だ。だから、今からいうことが、君を深く傷つけるかもしれない。」
概壇の表情が、一瞬、ためらうように揺らいだ。
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