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兄貴の財布には今日に限って紙幣しか入っていなかったらしい。
適当な小銭を渡して賽銭箱に投げ入れた。
ちなみに雅史さんは、立花が聞き取れるギリギリの声で言った『ベビーカステラ…』に反応して、光の速さで買ってきた時の釣り銭を嬉しそうに投げていた。
…雅史さん、わかったッス。笑顔の立花に頬擦りされて嬉しいのはわかったんで、こんなところで叫ばないでください。
大勢の人が見てるんで。中には殺意を込めた目で睨んでるんで。
「にーいちゃんっ♪今年は何お願いしたんー?」
「ん…秘密や。…海斗は?」
「秘密ー! へへっ♪」
…この2人はこの2人で何かやってるし。
男同士で何やってんだ? っていう視線は勿論あるけど、それ以上に心底イラついた視線と舌打ちがスゲェ…。
何でかっていうと、この2人の願い事が2人の雰囲気から簡単に想像できるから。
たぶん、これからもラブラブで…とか、そんな感じだろう。
もしくは相手の健康を願ったりとか。
…で、そうこうしていると、また雅史さんの暴走が始まった。
「紺たまぁぁー! 俺の願い事はね、今年も紺たまが笑顔で過ごせるようにってのと、紺たまと色んな意味でたくさん仲良くなりたいなぁぁー………って、痛い痛い! 友人、殴らないでwwww」
聞いてもいないのに自分から願い事公開して、少し解りづらいセクハラ発言で兄貴に肩を殴られてる…。
最近少し思う…雅史さんって黙ると死ぬんじゃね?
「友人酷い! 今日だけで何回殴ってくんの?www」
「殴られたくなきゃ黙れ! テメェが勝手に墓穴掘ってんだよ!」
「えー、どうせ掘るなら墓穴じゃなくてオケツを………いえ、なんでもないです! 黙りますから笑顔で指鳴らすのやめて! 怖いwwww」
はぁ…新年早々本っ当に騒がしい。
一応ここ神様の前だし、他にもたくさん人がいるし、騒ぐならもっと別の場所にしよーぜ?
まったく…少しはまともで静かなやつはいねーのか?
「達間…カステラ、食べる?」
「立花っ…!」
いた!! 大人しくて、癒しを与えてくれる存在!!
立花は雅史さんが買ってきた、おそらく売ってた中で一番でかいサイズの紙袋を抱き締めるように持ってて、小さい頬っぺたをモグモグ動かしている。
まだ温かくてほんのり甘い一口サイズのカステラを何個か貰って、うまいって言うと立花はふんわり微笑んだ。
はぁー、安らぐ…。
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