1244人が本棚に入れています
本棚に追加
俺も自室に戻って財布とスマホをズボンのポケットに入れて下へ降りた。
あと10分くらいで家を出れば間に合うな。
朝飯食えなかった兄貴には同情するけど、向こうに行ったら何かしら出店があるから大丈夫だろう。
なんて思いながらリビングに入った俺が見たものは………
「ごちそーさん。」
「ちょっと待て。」
明らかに朝飯を食い終わった様子の兄貴がいた。
おいおいおい、ちょっと待てっ!
兄貴が部屋から出てから俺がここに来るまでの時間は、どんなにかかっても5分程度だぞ!?
その間に食ったって事か!? いくらなんでも早すぎる!!
「ん? どうした達間。」
「いや…何食ったんだ?」
「へ? フツーに、おせちと餅と雑煮。
つか、何でそんな事…」
「や、別に。」
唖然とする俺をよそに、満腹になった兄貴はこれまたあっという間に身支度を済ませて、結局予定していた時間ぴったりに家を出ることが出来た。
『男の支度なんてこんなもんだ』なんて兄貴は言うけど、果たして本当にそうだろうか。
「あー、しかし寒いな。」
隣を歩く兄貴が白い息を吐く。
確かにこの季節に徒歩はキツい。
それでも俺みたいな学生はせっせと毎日学校行かなきゃならねーから寒がりな奴は可哀想だな。
俺の友達にも凄い寒がりがいて………あ!
「立花っ!」
「あ、達間…。」
噂をすれば…ってやつで、待ち合わせ場所の公園に俺の友達…立花紺(たちばな こん)と、その兄である雅史(まさし)さんがいた。
立花はこちらを見るなり、ゆったりした動きで俺の近くまで歩いてきてペコッとお辞儀した。
「…明けまして、おめでとうございます。」
「おう! 今年もよろしくな、立花っ!」
立花は礼儀正しい。
俺と同い年で、もうすぐ高3になるんだ。
ここだけの話、正直言ってそんな歳には見えねーんだけどな。
「…達間、どうしたの?」
「いや…なんでも!」
毛先が少し跳ねた(寝癖のような)癖のある柔らかそうな黒髪と、左側にある泣きボクロが特徴の立花。
大きな目で俺をじっと見つめた後に首を傾げたコイツは、ハッキリ言って幼い。
身長も160無いって言ってた。
高3どころじゃねぇ。中学…下手したら小学生っぽい。いや、それは言いすぎたか?
付け加えると、同じ男には見えねーかも。
「…達間、何か失礼なこと…考えてる?」
「い、いやっ、別にっ!」
あと、妙に鋭い。
最初のコメントを投稿しよう!