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「この神社って人凄いからさ、ちょっと目離した瞬間に見失っちまって!」
「ふぅん? 大変やってんなー。」
うし! なんとか誤魔化せた。
また何事もなく人混みの激しい神社を歩いていくが、その中で立花は俺にこっそり声をかけた。
「達間…」
去年一緒に被害にあった立花は俺を小声で呼び、心配そうな目で見上げる。
俺はそんな立花を安心させたくて、慣れない笑顔を浮かべた。
「立花、あの時はぐれたのは兄貴たちから目離したからだ。
今回は立花も雅史さんと手繋いでるし、俺も気を付けるから大丈夫だって!」
雅史さん、兄貴、雄大さんは全員遠くから見ても目立つ長身。
手なんか繋がなくても、よほどボーッとしてない限りはぐれることは無い。
「兄貴も! 大丈夫だからいい加減手離せよ!
………って、ちょ! 離れねぇーっ!!」
少し乱暴に手を振り払うが、離れねぇ!
俺が振り払うよりも強い力で握り返してくるんだ。
「兄貴っ! 心配いらねーって何度も…」
「達間。」
さっきまで黙ってた兄貴が低い声で俺を呼んだのとほぼ同時くらいにグイッと俺を引き寄せ、静かに耳打ちした。
「怖いくせに無理すんな。」
「は、はぁ!? 別に怖くなんか…」
「…それにな、あの日怖かったのはお前だけじゃねぇんだぞ。」
え? ………ん? あ、そうか!
「そっか、そういや立花言ってたな。
俺がいなくなるのは嫌だって…。」
そんなふうに言ってくれるなんて、立花は本当にいいやつだよな。
「あぁ………まぁ、紺くんもそんな事言ってたけどよ…。」
兄貴がため息をついて、やれやれと首を振っているけど意味が解らねー。
「ボソ…俺も怖かったんだっつーの。」
「兄貴? なんか言ったか?」
「…いーや、別に?」
…ん? まぁいいか。
とりあえず立花に少しでも安心してもらいたいから、恥ずかしいけど兄貴と手繋いどくか。
ぶっちゃけ、兄貴の手はでかくて安心するんだよな。
…別に変な意味じゃねーぞ?
「ちょいちょい、2人とも早くおいでー!
てゆうか友人、100円玉5枚ある? 両替してwwwさすがに500円玉は入れたくないwwww」
「兄貴、雅史さん呼んでるから早く行こうぜ!」
「おう。………あ!」
「兄貴、どうしたんだ?」
「わり、達間…小銭貸してくれ。」
「………」
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