伊井友人の憂鬱

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からかわれたと気づいたのか、達間はムスッとしかめっ面になり掃除を再開した。 俺がよく見るコイツの表情はいつもこれだ。 ムスッと不機嫌そうな顔。 笑顔なんて俺に向けてくれた事は殆ど無い。 …友達にはあるらしいけど。 なんか気に入らねぇな、俺はお前の友達以下かよ。 「ははっ…。」 思わず苦笑した。 コイツがこうなったのは俺のせいだってのに、何イラついてんだ…。 昔、構ってくれ・遊んでくれと寄ってきた達間を振り払って拒否したのは俺じゃねぇか。 …まぁ、過ぎた事は仕方ねぇ。 昔出来なかった分、これからは良い兄貴になればいい。 要は、構ってやりゃいいんだから簡単だ。 「なぁ、こっち向け。」 「んだよ、今忙し………ぶっ!! つめてぇっ!! 何すんだよクソ兄貴っ!!」 水かけたらキレられた。…そりゃそうか。 達間は濡れた短髪を犬みたいに首を振って乾かす動作をした後、俺を物凄い形相で睨んだ。 くそ、またやっちまった。 構ってやろうと思っても、やり方がイマイチ解らねぇから、さじ加減が難しくてこのようにやり過ぎることもしばしば…。 思った通りにいかねぇもんだ。 「何なんだよさっきからっ!! 邪魔すんならあっち行けっ!!」 構って喜ばせようと思ったけど、逆に怒らせる結果になってしまうとは…。 これ以上ここにいても達間の機嫌が直りそうもねぇし、大人しく退散すっか。 「そうだな、悪かった。 …じゃ、頑張れよー。お年玉の為にw」 「うるせぇぇーっ!!」 犬で例えると、牙を剥き出しにして今にも飛びかかってきそうな雰囲気の達間を背に、俺はそそくさとその場を後にした。 「何なんだよ…。アッサリ行きやがって…。」 風呂場を出る瞬間、微かに達間の声が聞こえた気がしたけど、どうせ憎まれ口でも叩いてんだろうな。 …さて、気乗りしねぇけど俺も自分の部屋でも掃除すっかなー。 ま、そんなにやる所もねぇだろう。…そう、サボりだw 「…うわ。」 部屋のドアを開けた瞬間、顔が引きつった。 普段は気にならなかったけど、改めて見ると酷いなこの部屋。 床は漫画や脱ぎ散らかした服で脚の踏み場が殆ど無い。 運良く棚に収まってる漫画も巻数の並びがバラバラだし、ゲームのコードもごちゃごちゃに絡まってる。 「…いや、まだ大丈夫だ。」 自分でもガサツな方だとは重々承知してるけど、男の部屋って大概こんなもんじゃね?
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