伊井友人の憂鬱

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「うしっ、終わった!」 驚くぐらいスッキリした部屋を見て、達間は満足感たっぷりの顔で額の汗を拭った。 で、俺はと言うと… 「おぉー…」 あっけにとられて感心するだけ。 掃除もほとんど達間に任せてたし、俺がやった事と言えばダンベルどかした事くらいじゃねぇか? いやぁー、助かったぜw でも何で部屋の掃除なんか…。 「…ん? どうした達間。」 達間が何か言いたそうにチラチラこっちを見ていたので声をかけてみると、何故か肩が小さくピクッと跳ねて目を泳がせた。 「…なぁ兄貴。俺、役に立ったか?」 いつになく小さい声で自信無さげに聞いてきた。 妙な事を聞くもんだな。これが役に立って無かったら一体何だってんだw 勿論『あぁ』と答えた。 すると……… 「そうかっ! 本当だな? 役に立ったんだな!?」 「お、おう…。」 な、なんだ? 今度はグイグイ詰め寄ってきやがった。 いつもは…特に俺にはツンツンしてるくせに、珍しく笑顔を見せる達間に少なからず動揺してしまう。 俺の役に立てた事がそんなに嬉しいのか? 「よしっ、んじゃこれで貸し1なっ!」 「…は!?」 …なるほど、そうきたか! 俺の部屋の掃除をする代わりに何か要求する気だ。 ニヤッとイタズラっぽい笑みを浮かべてるのが何よりの証拠。 「男なら借りはちゃんと返すのが筋だろ? 兄貴っ!」 「うん、まぁ助かったしな。 …で、俺は何をすればいい?」 さぁて、何を頼んでくるんだろうな? 達間は一呼吸置いて、はっきりと大きめな声で言った。 「明日の初詣! 一緒に来いよなっ!」 「………え?」 「え?」 「…もしかして、それだけか?」 「? …そうだけど?」 おいおいおい、どういう事だ? 初詣? いや、別に構わねぇけど、でもあれだ… 「つーか、別に言われなくても一緒に行くつもりだったんだけどw」 「えっ!?」 前も一緒に行ったし、今回もそうだと思ってたんだけど、それって俺だけだったのか? 驚いた声をあげた達間は、一瞬目を丸くしたと思ったら、今度はどんどん顔を真っ赤にさせてプルプル震えだした。 そして……… 「こんっの、くそ兄貴っ!! それならそうと早く言えよっ!!」 大声で捲し立て、バァンッ! と勢いよくドアを閉めて出ていった。 なんなんだあいつはw まだ高2だし、難しい年頃ってやつか?
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