伊井友人の憂鬱

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達間がこうなったのは、元々の性格もあるかもしれねぇけど、半分以上は俺のせいだと思う。 それと言うのも、俺は達間に取り返しのつかない傷を付けた事があるからだ。 当時中学生の俺は若気の至りで結構荒れていた。 勿論敵も多く、しかも人の弱味に漬け込むのが大好きなクズ共ばかり。 そんな俺の周りを、まだ小さい達間がチョロチョロしてたら…。 考えただけでゾッとする。 だから心を鬼にして突き放した。 達間の目に俺はどう映っていたのか知らねぇが、やたらと俺になついてたせいで突き放すのは難しくて、辛かった。 『うぅっ…グス…あにきぃ…。オレ…あにきと、仲良くしてぇよぉ……ヒック』 もう随分前の話だけど、その時の達間の絶望した顔を今でも覚えてる。 「なんで今そんなこと思い出したんだ…。」 やりきれねぇ思いで頭を掻いた。 後悔しても今更遅いし、俺が犯した罪と達間が傷ついた事実は変えられねぇ。 でも、思い出すたびにあの時の自分を殴ってやりたくなる。 「…馬鹿な事しちまったな。」 けどあの時から馬鹿な俺は、あの方法しか思い付かなかった。 突き放しておかないと、俺が知らない所でアイツが危ない目にあってしまう…。 俺はそれが何より怖かった。 どちらにしても達間は傷ついたけど、他の奴等に傷つけられるよりは俺が傷つけたほうがマシだと思った。 …その結果、俺たちに深い溝が出来てしまったのは言うまでもねぇ。 最近になってようやく距離が縮まってきたのが不幸中の幸いだけど、それは達間が再び歩み寄ってきてくれたから。 もう一度俺にチャンスをくれたんだと思う。 だからこれからはアイツにとって良い兄貴になれるように努力しないといけねぇんだけど、俺が不器用すぎて逆に怒らせたりすることもしばしば…。 しかも、達間は妙に臆病になってしまったようで、自分の気持ちを素直に伝えるのを極端に嫌うようになった。 いちいちひねくれた言い方をするため、何を思ってるか、何をしてほしいかが正直言って解りづらい。 そうさせてしまった張本人が言うことじゃねぇけど、あいつには安心して我が儘でも甘えでも言ってくれるようになってほしい。 今更俺に出来ることは何も無いかもしれねぇ。 でも、それでも、達間のためなら俺は何でもするぜ。 今までしてやれなかった分、な?
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