“大丈夫”

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那秋の俯くその横で、俺は微かな声を聞き取った。 “ダイジョウブ…” それが何回も、繰り返し聞こえてくる。 誰かが周りで言っているのかと確認したが、周囲はイチャイチャするバカップルばかり。 ほのかに、那秋の隣が白いモヤのようなものが浮かんでいる。 それが人型に見えるような、見えないような。 微妙なところでそれは薄れていく。 “大丈夫” その言葉は、まるで魔法の言葉のように、ふと那秋の涙も止まった。 「……帰ろ、朋樹」 「あ、あぁ」 なぁ、お前の隣に茉美ちゃんがいたよ。 “大丈夫、大丈夫”って元気付けようとしてた。 それすらお前に伝えられないのか? いまだに姿がはっきりしない茉美ちゃんは、相変わらずお前を愛してくれてる。 愛情を注いでくれていないなんて嘘だった。 逆だよ、那秋。 お前が茉美ちゃんに愛情を注いであげていない。 俺にも見えていないところで、お前を励ましてくれていた。 優しく包んでいたよ。 後ろから抱き締めていたよ。 茉美ちゃん、那秋、気付いてないんだよ? 茉美ちゃんは…寂しくないの?  
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