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魂消て振り向くと、そこにあったのは月に照らされた骸骨の手だった。
「ぎゃーっ!」
だが、茶屋の前を行き交う者は誰一人として亀吉に顔を向けなかった。
「さあぁ、参りましょうかぁ。のろ~い、……舟で、ゆっくりとぉ」
背後から聞こえる船頭の声は、回転数を間違えたレコードのように低音で鈍かった。
語り:秋風亭流暢(架空の噺家)
完
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