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一方、亀吉の女癖の悪さは一向に直らなかった。
「おう! 船頭、頼もうか」
遊女を連れた亀吉が、初めて見る頬被りの船頭に声を掛けた。
「へ、畏まりました」
俯き加減の船頭は、亀吉と遊女を乗せると、櫓を漕いだ。
だが、舟は一向に進まなかった。
「おう、船頭!」
亀吉が障子を開けると、煙管片手に月を見上げている船頭に声を掛けた。
「へっ!」
「ったく、何してやがんでぃ! まだ、茶屋の前じゃねぇか。早く漕ぎやがれ」
「くくくっ」
船頭が不気味な笑いをした。
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