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「その死んだ女がこの私ですよ。化粧で女は化けますからね。あの時、船頭さんを川に突き落とした後に、私まで川に投げて、あんたはこの舟で逃げた。……つまり、この舟は幽霊舟ですよ。あはははは……」
女は腕組みすると、嘲り笑った。
「ゆ、幽霊舟だと?」
亀吉がたじろいだ。
「若旦那、そうですよ。茶屋の通りをご覧な。人は通っているのに、あっしらには見向きもしない。つまり、見えてないんですよ、あっしらが」
「ふざけるな! 舟から降ろせっ!」
亀吉が舟から降りようと片足を上げた途端、もう一方の足を何かが掴んだ。
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