妄想ギャンブル【ライブベット】にようこそ。

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『そりゃ、ただの迷惑メールだろ? 無視すりゃいいんじゃねえの? あんま、真面目すぎなのも疲れるだろ。』 次の日、会社で同期のタカに相談したのが 間違いだった。 ヒデと真逆の性格をしているタカは 案外、好奇心を持ってしまったようであるが、 今は趣味のサーフィンとナンパが絶好の時期、 コイツにはそんな話が頭に全く入らないらしい。 タカはこんな性格だから諦めもつくが、 俺みたいにクソ真面目な奴がもう一人いる。 彼の名はヤス。 強く言われると断れない性格で、 この時代にブラック企業と名指しされかねない 俺の働いている会社で、 黙々と仕事をしている。 それも、そこそこ残業時間がかさんでいるはずだ。 ヤスはそれでも何も言わずに仕事をしている。 同期から見れば、こういう奴こそ 出世すべきだと思うが、 上司からは毎日、かなり詰められている。 上司もまた、ノルマに負われているようだ。 ヤスは足を引っ張る邪魔者なのか? そんな風には見えないが。 ある日、気になることがあった。 ヤスがいつものように上司に詰められた後に ヒデに漏らした言葉、 『ヒデ、俺、ぼちぼち疲れてきたよ。』 『あんなに詰められれば誰だってそうだ。 たまには有給休暇取ったほうがいいぜ。』 『とらせてくれないんだ、あの人が。』 ヤスがこうぼやいたときに、 彼のワイシャツの袖から前腕が見えた。 手術の後にしてはあまりにも大きい傷があった。 『ヤス、どうしたんだ?その傷』 あまり、大声を出さないヤスが、 珍しく大声で叫ぶ。 なのに、目がすわっている。遠い目をしている。 『あ!何でもない。バイクで事故ったんだ!』 即座に長袖のワイシャツの袖のボタンを閉めた。 この会社に入って3年のヒデは ワイシャツを半袖に切り替えたのに 同期のヤスはどんなに暑い日でも 一向に半袖にしようとしない。 刺青ならともかく、どうして半袖にしないのか? 余計なお世話であるが、少し気になっていた。
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