妄想ギャンブル【ライブベット】にようこそ。

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ヒデはヤスを色々な意味で気にかけていた。 複雑な感情ではあるが。 【ライブベット】のメッセージが 記憶から無くなりかけてきたころ、 ヒデはヤスと昼休みに会社の外に 食事に出かけた。 ヒデが以前から食べたかったパスタを出すお店に入った。 イタリアの国旗がお店の入り口で風に揺れている。 普段、ヤスは、自分で料理をするらしく、 前の日の残り物のご飯や、 皮付きのリンゴを会社に持ってきて、 自前のナイフで皮をむいて食べたりしている。 ウチの会社はほとんど男しかいないし、 家じゃなく会社で皮をむいているので珍しがられた。 今日は、たまたま自前の昼ご飯を 持参していなかったらしい。 ヒデはこのお店のミートソースが 好みのようで、メニューも見ずに注文した。 ヤスはメニューを見てカルボナーラを注文した。 俺たちは正社員じゃない、いわゆる非正規社員だ。 世の中の流行り言葉らしいが、 真っ先にクビを切られる弱い立場だ。 上司は正社員。 自分のノルマを会社から課せられつつ、 俺たちを監視している。 『なあ、ヤス。この会社大丈夫かな・・・』 『会社の業績は悪くないみたいだけど、 ウチの部署だけは業績が悪いらしいよ。』 『そりゃ、あのクソ上司の責任だよな。』 『どうやら、非正規をリストラするらしい。』 『なんでそんなこと知ってるんだ?』 『俺を説教するたびに、クビだ!、クビだ!と叫んでる。』 『それは、ただの口グセだろ。自分の能力を 他人のせいにしているだけだ。』 『口グセだけならまだいいんだ。 どうやら、アイツがしでかしたミスを 俺たちのせいにしているみたいなんだ。』 『ひどいな、それ。クソ上司のさらに上に 相談してみたら?』 『そうだな・・・』 仕事の問題なら、上司の上司に相談すればそれで済むはずだが。 好みのパスタだったから、5分もかからずに 食べてしまっていたのと反対に、 ヤスはパスタを食べるのに時間がかかっていた。 『ん?』 ヒデのスマートフォンがブルブル振動した。 メールが届いた。
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