prologue アクシデント

5/5
501人が本棚に入れています
本棚に追加
/62ページ
「だから英梨ちゃんしっかり者なんだね」 「しっかりしてなきゃやってられませんよ」 あたしは一人っ子だからよくわかんないけど。 きっと苦労してるんだろうな。 「あ、彩芽先輩」 英梨ちゃんの指差した舞台を見ると、丁度部長が月乃を抱き締るところだった。 演技だから本人達は何にも思ってないけど、学校の生徒に見せたら悲鳴の嵐だろうね。 二人とも人気あるし。 ってこの場面の後って、あたしも出番じゃん! 「え、英梨ちゃん、行ってくるね!」 「コケないで下さいよ」 そこまでガキじゃなーいっ! 『あ、れ……目から……』 見事に涙腺をコントロールする月乃。 ボロボロと涙を落としている。 ほんと、もうデビューしててもおかしくないんだけど。 なんで子役とかにならなかったのか不思議。 『シーダはもうロボットなんかじゃない。立派な人間だよ』 これはあたしのセリフ。 そろそろエンディングだ。 『私……みんなと同じ、ですか?』 『当たり前だろ!お前は俺らと同じ“仲間”だ!』 で、みんなでわーっと月乃に駆け寄って……。 ズルッ 「ひゃっ!」 ななななんか謎の浮遊感が……。 目の前には月乃の驚いた顔。 あ、もしかコケた? 周りの景色がまるでスローモーションのように流れて行く。 ――コケないで下さいよ。 英梨ちゃん未来が見えたりするんじゃ……。 ってそんなの考えてる場合じゃない! ぶつかる! ゴンッ 「月乃っ!」 ―――ちょ、誰かあたしの心配もしてよ……!
/62ページ

最初のコメントを投稿しよう!