もう少し

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 天に意思あり。そう思うことが稀にある。  家から出たときは晴天だった。確かに雲はあったが、それすら気にならないくらいの青空が広がっていたはずだ。  だから、柄にも無くたまには散歩がてら、なんて思ってしまった。たかだかたばこ一つ買いに来ただけで、その代償が大きいぜ。  溜め息を吐きながら、パチンコの雑誌を片手にコンビニの外を眺めた。大粒の雨がアスファルトを穿つ勢いで降り注いでいる。  店内を見回すものの、傘は見当たらない。レジの方に目が向くと、ビニールの傘を購入する若者の姿が見えた。  店員と仲がいいのか知らないが、あと一つ残ってて良かった、なんて会話が聞こえてくる。  雑誌に夢中になっている内に、売っていた傘は全滅していた。畜生、今なら数百円の傘に万札を出してもいいだけの価値があるぜ。  なに、どうせ通り雨だ。傘を買ったあいつの方が後悔するに違いない。そんなことを思って自分を慰めた。  しかし、十分、三十分と待てども雨は止まない。むしろ強まってきた気がする。  笑えない。こんなことなら車で来ればよかった。なにを阿呆みたいに柄じゃないことしてんだよ。  天気が良いから、運動がてら歩いていこう。健康にもいいし、歩いて二十分くらいだろうし。歩くなら軽装のほうがいいよな。シャツにジーンズ、スニーカーでいいだろう。  なんて言っていた一時間くらい前の自分を殴りに戻りたい。  俺が傘を持ってない時を見計らって降り出したんじゃないかと、雨雲のやつを疑うものだ。さて、どうしたもんかな。
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