もう少し

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 立ち読みにも飽きてきた。それに店員の目が痛い。暇人に見えているのかもしれん。なにせ昼下がりのこんな時間に、一時間も立ち読みしてるんだ。  こっちだって好きでいるんじゃない。雨を防ぐ手立てがないから、ここで止まないかと待っている。  だが、いくら待てども降りやまない。こりゃあ、覚悟決めるしかないか。  適当にお茶のペットボトルを掴み、後は煙草とライターを購入してそれらを袋に入れてもらった。尻ポケットに入れていた財布をこの袋に入れて口を縛る。  貴重品はこれで濡れない。濡れるのは我が身一つ、か。  自動ドアを通り、どしゃ降りの中に飛び込んだ。頭に腕を重ねて守るが、その甲斐もなく雨粒が全身を濡らしていく。  俺が走って移動することが気に入らないのか、雨が一層激しくなってくる。これは堪らない。  走っていると、山に向かう道と直進する道とで分かれた。俺の家へはこのまま真っ直ぐ行けば良いのだが、分かれた道の先に見付けたものを見て立ち止まった。  あれは確か、赤鉄トンネルだ。ちょうどいい、あそこで雨が弱まるのを待とう。  もう十分濡れてはいるから今更雨宿りする意味もない気がしたが、雨足がいかんせん強すぎる。少し休むついでだ。一服していこう。  トンネル内に駆け込み、内部に響く滝のような雨音を耳で捉えながら、腕や頭を降って水気を払う。  数分程度しか走ってないのに、既に服が水を吸って重くなっている。困ったもんだ。
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