第1話

4/9
前へ
/9ページ
次へ
「なぁミツル。僕がヘビ嫌いなの知ってるよな」  ちりあくたの、芥。たんぼの田に満たされる充という名の青年はおっ、と目をしばたいた。 「そうだったな、小学ん時アオダイショウを持って鬼ごっこしたらマジ泣きして漏らしたっけタケル君。毒無いのに」 「なんでそういうことまで思い出すんだよ」  掘り返すなよ! 原因だぞ。  水滴の覆ったグラスの中のコーラを喉に通して、僕は息を吐く。切り替えだ。  その様子を目の前で充は笑っていた。にやけていた。昔からの悪ガキの顔だった。  ジャージ着にしなっとした体型に黒いタンクトップ。胸元には十字のシルバーアクセ。  色染めを落として色素の薄くなった茶髪のセミロングにニット帽を被る様は、壺に入るも足のはみ出たタコみたいだ。うん。襟足辺りとか。髪の毛はタコの足より短いけど。 「こんな所呼びつけてヘビの話するなら、本題を出してくれよ。僕は検定明けの連休だけど、今日平日だぞ?」 「ああ、サボった」 「サボッ?」 「だってほら、宇都宮まで車で移動するのって俺達の家から四十分はかかるじゃん? で信号待ちまで眠くなる訳だ。駐車場まで行く訳だ。停めたら寝たくなる筈だ。今日は担任に連絡入れてそこでリタイアした」 「何しに行ったんだそれ」  お前は寝るために専門学校へ行ったのかよ。さては昼の今起きたてだな!  朝飯も食ってないだろう? だから開口一番に『よー待たせたな。とりあえず腹減ったからなんか頼もーぜー』って言ったんだろこいつ?  学生の本業ガン無視して。夏休みはまだ先だぞ? 卒業出来るのか? 「という経緯で暇そうにしてるお前呼びつけたわ。ツイッターでリアル事情呟くもんじゃないねータケル君? あー終わったー明日はゆっくりしよ、なんて漏らすからだよ。炎上だよ」  お前の奔放本能がか。燃やすのは本能寺にしておけと。お前の敵はそれだ! 敵は己の本能にあり。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加