第1話

5/9
前へ
/9ページ
次へ
「全く、相談があるって言うから来てみれば野郎の食事デートってオチかよ」 「相談ならある」 「何」 「彼女と別れそうなんだよー。助けてタケル君ー」  普段のファニースマイルがどうもわざとらしく、いかにもわざとらしく泣いてる表情で迫ってきた。  わあ分かりやすい。慰めて欲しいんだ。これまで五回も乗ってるけどね。  加えて当て付けだな。別れるどころか告白も無い僕への。平々凡々の僕に対しての! 「死ね。破綻六回記念おめでとう」  言い切って僕は席を立つ。会計八百七十円を野口一枚テーブルに置いて去ろうとした。釣りは今回の教訓料にしよう。 「あー待ってウェイトっウェイト! その相談にも乗って欲しいけどそれじゃないって!」  恋人によりを戻そうと手を伸ばす様なポーズはやめてくれ。他の席のソファから客が見てるんだ。恥ずかしいだろ。 「カップルの問題より重要なこと? ミツルが?」 「ん、まあ」充はガシガシとニット帽の中に手を入れて掻く。 「相談というか、確認? 正直重要なのか深刻なのか大事なのか分からん」 「なんだそれ」  さっぱり意味が分からん。友人の痴話問題とは違うのか? 「タケル君、変な質問していいか」 「嫌な質問ならお断りだ」  充は僕こと五味武。愛称タケル君に問い掛ける。 「偽銭島ってやつのこと覚えてるか?」
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加