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「全く、相談があるって言うから来てみれば野郎の食事デートってオチかよ」
「相談ならある」
「何」
「彼女と別れそうなんだよー。助けてタケル君ー」
普段のファニースマイルがどうもわざとらしく、いかにもわざとらしく泣いてる表情で迫ってきた。
わあ分かりやすい。慰めて欲しいんだ。これまで五回も乗ってるけどね。
加えて当て付けだな。別れるどころか告白も無い僕への。平々凡々の僕に対しての!
「死ね。破綻六回記念おめでとう」
言い切って僕は席を立つ。会計八百七十円を野口一枚テーブルに置いて去ろうとした。釣りは今回の教訓料にしよう。
「あー待ってウェイトっウェイト! その相談にも乗って欲しいけどそれじゃないって!」
恋人によりを戻そうと手を伸ばす様なポーズはやめてくれ。他の席のソファから客が見てるんだ。恥ずかしいだろ。
「カップルの問題より重要なこと? ミツルが?」
「ん、まあ」充はガシガシとニット帽の中に手を入れて掻く。
「相談というか、確認? 正直重要なのか深刻なのか大事なのか分からん」
「なんだそれ」
さっぱり意味が分からん。友人の痴話問題とは違うのか?
「タケル君、変な質問していいか」
「嫌な質問ならお断りだ」
充は僕こと五味武。愛称タケル君に問い掛ける。
「偽銭島ってやつのこと覚えてるか?」
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