『序章』

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『暇』という言葉は日本人の最高の発明なんじゃないだろうか。 白昼堂々学ラン姿のまま、地面に寝転がるサボり少年は目をうつらうつらとさせながらそんなくだらないことを思っていた。 「……あぁーーマジで暇だぁ……」 寝ることもだらだらすることも嫌いではないけど、好きでもない。頭で腕を組みながら見つめる空にはバンバン車が空を飛んでいた。 2×××年ーー これは少し現在より遠い世界の姿。 といっても日本は相変わらず平和で何も変わらない。少しの発展はあったとしてもそれは変化とは言わないぐらいの僅かなものに違いない。 車が空を飛ぶようになったり、自動システム化され運転免許が要らなくなったり、高校が義務教育化されたり、『魔法科学』という授業が必須科目になったり、その他もろもろ色々便利な世の中になったりはしたが…… まぁそれだけだ。 どれも今の現在を生きている少年にとっては当たり前で退屈で暇には違いなかった。 「……つまんね……」 呟く声も空飛ぶ車の音に虚しくかき消される。 少年の住む街は学園街といって学生たちの住む街だ。ドーム状の結界がその街を守っていて空飛ぶ車等が落ちてきても大丈夫なようになっている街。 詳しい原理はよく分からないし、知る気も興味もない。 そんな小難しいことを考える暇があったらこの暇を満喫していた方が少年にとってはまだマシだった。
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