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「店長。報酬も無しに小さな女の子が働いてくれると思いますか?」
「当然だ。なんといっても世界のためだからな」
山と訊かれて川と答えるぐらいに完璧な我が輩の答えだったが、ベンジャミンくんはやれやれと首を振っている。
「はあ、そんなわけないでしょう。子供にだって報酬は必要です」
「ぬ、ぬぬ。まあ、確かにそうかもしれん。しかし、なぜキビヤックなのだ」
そもそもキビヤックが何かは我が輩にもわからないのだが、あえてそこは尋ねない。
「美味しいからに決まってるじゃないですか。特に小さな子供には大人気です」
「そう、なのか?」
「少なくとも私はそうでした」
ふと横を見ると銀髪麦わら帽子の幼女も頷いている。
ベンジャミンくんは信用ならんが、幼女が言うなら正しいだろう。
「なるほど理解した。それでは、そこの、えーと……」
「土乃子ちゃんです」
「土乃子ちゃん! 地球のため、世界のため、我々非リア充のため! 大いに働いてくれたまえ!」
「はいっ!」
土乃子ちゃんはビシッと敬礼すると横にあったエアコンを持ち上げた。
「へ、へえ、土乃子ちゃんは力持ちだね」
まさか我が輩が持てなかったエアコンをこうも軽々と持ち上げるとは。
これは幼女に対する認識を改める必要があるかもしれない。
「それでは、行きます!」
土乃子ちゃんは可愛らしい声でそう告げると――――
全力でエアコンを我が輩に向かって投げた。
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