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突如、ベンジャミンくんの声がしたかと思うと、彼女は風の速さで我が輩の目の前からレコーダーを奪い去った。
「なんか変な声が聞こえると思ったら……なんです? これ」
「見ればわかるだろ。演説だよ。我が輩が世界のメシアになった際、世界中の至る所でラジオ体操の代わりに流れる予定の演説だよ」
「…………」
ベンジャミンくんは凍てつく視線を我が輩に投げかけると、乱暴にレコーダーを放り投げた。
我が輩は慌ててレコーダーに飛びつく。
「イタッ」
無理をしたので腰がまた痛む。
「店長がおバカなのはわかってるので何も言いませんけど、お客様が待ってます。さっさと来てください」
パートとは思えない言葉遣いでそう言い残すとベンジャミンくんは颯爽と去っていった。
我が輩はとりあえずレコーダーを確認する。
「ああ、やっぱり最後の部分に声が混じってる。……もう一回取り直――」
「早くしろっ!!」
「はいっ!」
扉がもう一度開き、ベンジャミンくんのおどろおどろしい声が響いた。
我が輩は急いでレコーダーを片付けると、未だに痛む腰をさすりながら行くのだった。
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