断罪のクレマシオンレイナ

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〈夕鳴さん、マスターが呼んでらっしゃいます〉 その時、頭に男性の声が響いてくる。 彼はギルド『フォルテ・エスパンタリオ』の事務を担当しており、その天光魔法による魔法で夕鳴に念話を行っていた。 〈わかったわ…すぐ行くって伝えといてくれる?〉 夕鳴はシャワー中の念話というデリカシーの無いことを怒ることもせずに落ち着き払った声で返す。 向こうからは了承の答えが返ってきただけですぐに念話は切れた。 「…『蒸火焔』」 それと同時に彼女はため息をつくとすぐに水を止めると、タオルを使うのも億劫に感じ、魔法を器用に使うことで身体の水滴を一瞬で蒸発させる。 そしていつも通りのタンクトップ&ミニスカという服装に着替えると壁に立てかけてある藍色の鞘に収まった太刀に視線を向ける。 「くっ…」 彼女は頭痛を訴えるように顔をしかめて額を押さえる。 “あの夢”を見るたびに思い出される思い出したくもない記憶 それは彼女が以前所属していたギルドが目の前で土壁に挟まれてぺしゃんこになる瞬間だった。 彼女が以前所属していたのはそこまで有名でもなく大きくもなく、ギルドマスターが自分の家を本拠地にしているような小規模ギルドだった。 だが、事故で両親を亡くした幼かった彼女にとってはそこはヒーローの住む場所だった。 それぞれが仕事に対し色々な主張があり、いつも喧嘩が絶えないギルドだったが、彼女にとってはそこが第2の家庭だった。 そこで知り合ったのがギルドマスターと副ギルドマスターの子供であり、当時中学生になったばっかりの夕鳴と同い年の『弓塚 浩輔』という少年であった。 歳が同じということもあり、夕鳴と浩輔はすぐに仲良くなった。 剣術を習っていた浩輔は夕鳴に剣術を教え、魔法技能に関して秀でていた夕鳴は浩輔に魔法を教えあうことになった。 どこに行くにしても一緒の二人を見て、ギルドの仲間は散々夕鳴達を遠まわしにからかったり応援したりしたが、そういうことに疎かった二人は首をかしげるばかりであった。 そんな二人を見て、夕鳴の身元引受人であり浩輔の両親である二人は気長に見守ることにしていた。 急くことはない、時間はまだまだあるのだから…そう言って。 そんなある日、二人がいつも通り学校から家であるギルドに帰ってくるとそこは地獄だった。
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