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まぁ、だからこそ腐っている世界なんだよな。こんな世界は……要らないよな。
「フーレス……後で謝るから──」
俺が『先にキルティアに帰ってくれないか?』という前に、フーレスの人差し指で口を塞がれた。そのフーレスは、哀愁漂う笑顔で佇んでいた。
「言いたいことは分かってるの。…………だから、後で特製のアップルパイでも作ってほしいの」
…………本当に良い嫁を持ったぜ俺は。
そう言い残したあとフーレスは、自分でキルティアへと帰還した。フーレスが得意な属性は氷なのは変わりないが、フーレスは輪廻神になったことにより全属性を手に入れた。
つまり次元属性も手にいれているということ。だから自分でキルティアへと帰れた訳だ。
「ふぅ……フーレスに見合う男になれているのかな……俺は」
そう呟きながら、俺は一人、外へと歩みを進めていく…………。
俺は今、さっきまでいた城の天辺に立っている。ここなら、世界全てとは言えないがこの街の全貌が窺える。こんなに空や遠くにある森や山は綺麗なのに、所々で首輪をつけた人が蔓延っている。
それに疑問を持たない人々。この世界にももちろん定番の主人公が居たりするが、ソイツらさえ疑問を一切抱かないのだ。
普通は良識のある筈の転生者や脇役までも違和感を抱かない。これがこの世界自身の力なのだ。
「…………この世界の意思も腐っている。世界神も腐っている。世界を創った最高神も腐っている。いや、男同士って意味じゃない…………って、俺は誰にツッコんでんだ……」
俺はトチ狂ったと思われる自分の頭を左手で叩いたあと、右手を空へと掲げる。
「世界を壊すなんて久しぶりだな……罪のない人々よ、すまない───とは言わないぜ」
この世界が存在すること自体が罪なのだから、この世界に生まれた存在全てが罪を背負うことになってしまう。だが…………その罪も俺が背負ってやるのだ。壊すことによってな。
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