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散歩を十分に満喫した俺は街道の突き当たりにある噴水に腰掛ける。
別に疲れたという訳ではないが、少しここで黄昏れたい気分になったのである。
「……おや? 奇遇じゃないか」
座った途端に何故かマグが現れた。奇遇とか言いながら俺を探してたくせに…………しかも面倒な事を頼もうとしやがって……。
「…………何か用か? マグ」
思考も記憶も分かっていて何のようなのかは知っているのだが、一応言葉のキャッチボールをするために質問する。
「いや……セイムに臨時の教師を頼みたくてね……大丈夫かい?」
「問題ない」
「そうかい。断られたのなら───って、え?」
マグは断れると思っていたようだが、俺の即答で良い返事をしたのが予想外だったようで、目を丸くして鳩が豆鉄砲食らったかのような顔をしていた。
「今、なんて……?」
「別に臨時教師になっても構わないって言ったんだよ。ヒートが行方不明なら仕方ないさ。それに久しぶりにセイアとエリーをしごきたかったしな」
俺は自分で狙って悪どい笑みを浮かべる。マグはそんな様子の俺を少しで鼻で笑ったあと、いつも通りの表情を見せてくれた。
「ありがとう、セイ……それと、君は変わってないね……」
「色々と変わってるさ。でも、変化していない部分が目立っているだけだ。マグみたいに日に日にリアへの思いが強まっているのと同じように変わって───」
「…………人がいないからまだ許すけど、あまり周りに口外しないでよね……」
マグは肩を落として俺に言う。
俺は口が固いと自負しているから、周りに口外なんてするわけがない。というか、口外したら折角の説得材料が無くなってしまうしな。
「それじゃ、今日一日、臨時教師を頼むよ」
「ああ、任せな」
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