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先生は部活動をしていないわたしがこんな時間まで残っているなんて可笑しいと思ったんだろう……と思う。
といっても、わたしが帰宅部だということをちゃんと知っているのかはわからないけれど。
どちらにしても、こんな時間に先生を訪ねてくるなんて可笑しいと思われて当然なんだ。
いまだにどきどきと大きく高鳴り続ける心臓を左手で押さえながら、ゆっくりと深呼吸をする。
そしてその音が少しおさまったところで、口を開いた。
「せんせ……お願いが、あって」
「お願い?」
わたしの言葉が予想外だったのか、先生は瞳を大きく見開く。
だけどそれはすぐに細められて、
「お願いって、何?」
やさしい口調で、そう訊いてきた。
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