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受付に名前を言えば、一人の男の先生が俺に頭を下げた。竹内、という人だろう。
「此方にどうぞ」
そう言って微笑んだ先生は歩き出した。
「ゆうりっ…」
一つの個室に、ゆうりの姿はあった。酸素マスクをして眠っていた。腕に点滴をつけながら。
傷という傷は、そこまでなく、絆創膏が唇近くに貼られているくらい。骨が折れている、ということでもないらしい。
だけど、顔は痩せこけ、目の下にはよくわかる程の隈。俺が知っているいつものゆうりではなかった。
「それでですね…」
そう、話し出した先生の方に顔を向けると少し眉間に皺を寄せて手に持っていた診断書らしきものを見ていた。
「ゆうりくんが見つかったのは、人気が少ない路地裏です」
「路地裏?」
「はい。救急隊員の方の話では、上着は乱れ、ボタンはついていなかったと言っていました。状況からして、三日間は飲まず食わずだったのではと」
頭の中が真っ白になった。上着は乱れ、ボタンはついていなかった?そんなの、考えられるのは一つしかないじゃないか…
「…ご察しの通り、ゆうりくんは誰かに襲われたのではないかと…」
「襲われた…」
どうしてゆうりが?そして誰が…
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