黄昏の魔導士

3/3
前へ
/3ページ
次へ
否、それは山などではなかった。 ゆっくりと、だが確実に王都の方角へ進行している。 「はぁ~…こんな事ならさっさと彼女にプロポーズして片田舎で暮らしときゃ良かったっす。きっと王都はもう終わりっすよ……」 「そう卑屈になるなB.J. 救世主はいつの世も遅れて登場するものさ。もう少しの辛抱だ。きっと彼らが…なにィッ彼女だとぅ!?この俺様を差し置いてッ…!彼女だとぅ!!?」 ーー世界獣モンストロ 山に見えていた部分はその実、甲羅であり、四方に空いた穴からは、短くもゴツゴツとした岩肌のような足を突き出し、一歩踏み出す度に大地を震わせる。 後方の一回り小さな穴からは先端が少し欠けた尻尾が見える。 逆の、前方にある一回り大きな穴からはニュッと首を覗かせている。その巨体の割に小粒な“左目”は絶えず王都の方角を見つめていた。 何もない平地で、陽の光を遮る程の体。 小島にすら匹敵する巨体を誇るーー大亀。 それが動く巨山の正体だった。 生きる天災やら、島龍やら、各ギルドによって異名はまちまちだが、どのギルドでも共通の認識がある。 討伐ランクはアンノウン。 モンストロ討伐は誰であろうとも不可能だということだ。 しかし討伐は出来なくとも退ける事は可能な者達がいる。 並のギルド員では足止めすらままならない、この生きた化石を止める事が出来る者こそ、世界に僅か七人しか存在しないーー 「?……!?せっ、せせせ先輩っ!あれっ!あれあれあれェッ!」 「俺様悲しいっ!あの夜の杯は嘘だったのかっ!彼女など要らないと誓った、あの18の夏をォォォッ……!」 「ウルセェ!いいから後ろ見ろッ!」 「ん?後ろぉ?……!?あっ、あああああの方々は……ッ!!」 ーー“七星大魔導士”である。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加