童話『元素の力』

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昔々ある所に、馬鹿が居ました。 そしてその馬鹿は切実に願っていました。 『お金が欲しい』 と。 これは誰もが持つ願いでした。 しかし、叶えたのはこの馬鹿1人でした。 それは、彼が正真正銘の馬鹿だったからです。 彼はあるとき流れ星を見ました。 そして言いました。 「金が欲しい!金が欲しい!金が欲しい!」 3回言えました。 「よっしゃ!!」 しかし、何も起こりません。 当たり前です。 『流れ星に3回願いを言えたらそれが叶う。』 なんて、迷信ですから。 しかし、彼は馬鹿ですから、迷信を信じています。 「あれ?おっかしいなぁ~。」 彼は首を傾げました。 「…手から金を出せるようになってたりして。」 出せる訳がありません。 しかし彼は出せると思い込んでいます。 何せ馬鹿ですから。 「ハッ!!」 『ジャラジャラジャラ!!』 出ました。 右手から純金。 左手から純銀が…。 そして彼は多くの富を得ました。 その後、彼の話を聞いた人々は 『もしかしたら、自分も出せるかも知れない。』 と思い、試しました。 多くの人々が挑戦しましたが、出すことができたのは、馬鹿ばかりでした。 ただ、出たものは、鉄だったり、銅だったり、必ずしも金や銀ではありませんでした。 後にわかったことですが、人間には全ての人に物質を出す力がありました。 そしてそれは人により様々で、左右の手で違うものが出せるのです。 初め、馬鹿しか出せなかったのは、その他の人が、頭の片隅では、 『出せないだろう。』 と思っていたからです。 完全に自分は出せると信じ切っていた馬鹿のみ出せたのです。 全ての人間が物質を出せることがわかった現代では、この力を疑う人はいません。 全ての人間が物質を出せるのです。
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