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視点-青年
「ふぅ、やっぱりここは涼しいな。」
散歩紐を犬の首輪から外し、自由に遊ばせ、自分は手ごろな岩に座って川を眺める。
こんな田舎の山の中だから出来る事だ、普通の公園とかでやると危険だから真似するなよ?
雨で増水したのか、いつもより川の流れが早くなっている、まるで横に落ちる滝のようだ。
まぁ、川に入ったり近寄らなければ問題は無いだろう。
「ん~…っはぁー。」
背伸びをしながら深呼吸をする、体の中に溜まった悪いものが綺麗に洗い流されるようで気持ちがいい。
地面の匂いを嗅ぎ回る愛犬から視線を外すと、まだまだ落ちそうにも無い夕日をぼーっと眺める。
大体10分ぐらいだろう、呆けているのを切り上げて帰ろうと腰を上げる。
辺りを見回して愛犬の姿を探す。少し距離が開いてるが上流の方で見つけた。
…なんで川のふちギリギリに居るんだアイツは!
危ないと思った瞬間には、足を滑らせたのか激しい流れの中に落ちていってしまった!
まずい、と思った時にはもう、体が勝手に動き出して川の中に飛び込んでいた。
水面で暴れている愛犬の体を夢中で捕まえる。だが流れが速すぎて身動きが全然取れない。
「こら!ぶほぁっ!暴れん…ごぼぉ…」
奮闘虚しく、一人と一匹の体と意識は激流に飲み 込まれていった…
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